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根拠に基づく医療

今までの医学は、理論や経験、あるいは権威者の判断に頼っていた部分が多くあり、必ずしも「根拠に基づいた医療」が確立されていないことが問題となっています。出来るだけ客観的な疫学的観察や実験を根拠として、良心的に、明確に、分別を持って、最新最良の医学知見を用いて患者と一緒に治療の方針を決めていくことを今後の課題としています。
この「根拠に基づいた医療」の重要性は精神医学の分野においても注目されています。治療への介入とその結果の因果を数値で表すことの出来る生体データを主として明確にし、治療介入を実施することの有効性を評価していくのです。ただ数値で表すことは、精神科の領域では難しいことが多いのが実際で、重症度を測る評価スケールの点数や、入院期間、自殺の有無などを、治療結果を表す客観的データとして用いています。
【うつ病の評価に用いられる評価尺度】
◆ハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D)
◆ベックうつ評価尺度(BDI)
◆モンゴメリー・アズバーグうつ病評価尺度(MADRS)など

箱庭療法

児童期(12歳未満)や思春期(12歳~17歳)でうつ病を発症している子供達が増えているなか、投薬治療と並んで効果が期待され重要視されているのが、箱庭療法や遊戯療法です。

【箱庭療法の手順】
箱庭療法を実施する部屋にはセラピストが用意した色んな道具があります。縦57cm×横72cm×高さ7cmの箱の中に砂を入れ、用意された道具(※建物や木や動物や人などのミニチュアのおもちゃや、石、貝殻、ビー玉、怪獣など)を使用して、箱の中へ自由に”何か”を作っていきます。カウンセラーはそれを見守ります。
箱庭を作ることで患者は自己表現療法となり、カウンセラーは仕上がった箱庭を見てそのメッセージを読み取ったり、箱庭の変化の様子を見たりと患者の内的世界を知る手がかりにできます。

患者は部屋の中にある道具を見て、自分の今の心理世界を表すのに当てはまるものを選んでいきます。
表面と内面の落差を示す例として貝殻を置き、草の葉で飾る、その上に花を並べるというとき、始めの貝殻は死や無気力を示し、その上の花は、華やかな外見の姿を表しています。

こんな箱庭療法は何回か繰り返し行われて、時間をかけてその回復を促していきます。
私もこの治療法を行いましたが、どうしても内に籠ろうとしてしまう気持ちを外へ吐き出すひとつの足がかりとなりました。

社会技能―ソーシャルスキル

うつ病の治療の中で、認知行動療法や社会技能、またはソーシャル・スキルがあります。認知行動療法とは、抑うつとした気分のバックにある認知の歪みを自分で意識し、合理的な認知を形成することです。社会技能、ソーシャルスキルとは、近頃イギリスの小中学校で重要視されているもので、社会の中で自然に他人と関わり、生活していくことに必要な能力のことを示します。「ライフスキル」や「心理社会能力」、もしくは「生きる力」とも呼ばれることもあります。

社会技能を「日常生活のなかで出会うさまざまな問題や課題に、自分で、創造的でしかも効果ある対処のできる能力」とWHO(世界保健機関)では定めています。イギリスではこの能力を育てるため、PDHE(人格的、社会的健康教育)という教科を作っています。

【社会技能とは】
意思決定 ・問題解決能力 ・創造力豊かな思考 ・クリティカルに考えていく力 ・効果的なコミュニケーション ・対人関係スキル ―自己開示、質問する能力、聴くこと  ・自己意識 ・共感性 ・情動への対処 ・ストレスへの対処

【このような能力が身に付いた結果、次の能力が可能となる】
◆その場の雰囲気が分かる。
◆自分の発した言動を相手がどのように受け取るか想像出来る。
◆自分の考えを、上手に相手に伝える事が出来る。

うつに関わらず、社会人として身につけたい能力ですね。

自尊感情

不安ばかりが先に立つ、そんな時はありませんか?
自分を認める感情、すなわち「自尊心」というのは、人格の形成や情緒の安定にとても重要であると考えられています。「自尊心」が薄い人は、自分を信じることが出来ないため、何をしてもうまくいかないと懐疑的になってしまい、何もできなくなってしまいます。結果、自制心の喪失を誘い、薬物依存症やアルコール依存症、過食症・拒食症などの摂食障害といった精神障害を招くこともあります。
うつ病の患者は、この様に自尊心を失っていることが多いという考えから、欧米のうつ病治療では薬物療法と合わせて、カウンセリングによる患者の自尊心の快復が行われます。

「自尊心」は日本語として意味する「プライド=傲慢、自惚れ」とは異なります。「自尊心」はありのまま、そのままの自分を受け入れて、誇りを持つということです。それゆえ、うつ病患者への過度な励ましは、プレッシャーとなり、症状を悪化させる恐れがあるため注意が必要です。

音楽で治す

音楽を聴くと心が動きますよね。
うつ病の治療として楽器を演奏したり、音楽を聴いたりする音楽療法があります。
音楽は古くから治療法として用いられていました。それを示すものとして、旧約聖書「サムエル記」には、うつ病のサウルをダビデが竪琴で治したと記されています。
ただし、医療行為としては正式に認められていません。音楽の社会的・生理的・心理的効果を応用して心と身体の健康を整えるという医療行為ととらえる立場もあれば、補完医療、または代替医療とする立場もあります。
音楽療法の現在は、高齢者ケアや引きこもり児童のケアに用いられています。日本音楽療法学認定の音楽療法士という資格もあります。

【音楽療法は立証済みの補完療法であり、多くの病状や問題に効果を上げている。治療力はなく、いくつかの補完療法のように、重大疾患の治療法として勧められることもない。しかし、優れた補完医療法の例にもれず、幸福感や生活の質を高め、症状を軽減し、初期治療やリハビリテーションの効果を高めてくれる】
バリー・キャシレス ※代替医療ガイドブック(春秋社p402)